2022年9月26日月曜日

植物の体細胞分裂の探険

来る2022年11月2日(水)に多摩六都科学館で「やり直し理科実習 ~顕微鏡を使ってみよう~」というイベントを開催いたします。つきましては、お時間とご興味がありましたら、ご参加いただければ幸いです。

さて、ミクロ探検隊も呼応する形でインスタグラム用の「植物の体細胞分裂」の動画制作を8月より2か月間取り組んできました。

しかし、納得できる内容にするには、まだまだ時間を掛ける必要があることが分かり、ここで一旦休止することにしました。

という訳で、この記事では、これまでのダイジェストをご紹介させていただきます。

どのような動画を制作しようとしていたか

まず、どのような動画を制作しようとしていたかです。これについては、タマネギ以外の植物と対比をした構成にしたいと考えていました。

制作する動画の構成を考える段階で、タマネギの体細胞分裂の各ステージの映像をただご紹介するだけでは面白さに欠けると思い、タマネギ以外の植物との面白い対比ができないかと考えました。そこで浮かんだのが、植物のモデル生物であるシロイヌナズナです。事前調査の段階で、タマネギの根端の体細胞分裂観察と同じ方法を用いて、シロイヌナズナの根端の体細胞分裂を観察できるといった情報や写真を見つけることができなかったため、ミクロ探検隊として探検してみる価値もあると思いました。

ただ、シロイヌナズナの種子はタマネギの種子の1/10ほどの大きさ(0.3~0.5mm)しかなく、根端の細胞の大きさも1/3ほどと小さく、これらから、シロイヌナズナはモデル生物ではあるけど体細胞分裂を観察する対象としては向いていない可能性が高そうだ、という予想もしていました。

タマネギの根端での体細胞分裂の撮影

次に、タマネギの根端での体細胞分裂の撮影ついてです。この撮影は、世界中で「植物の染色体観察」の材料として使われているため情報が多く、それらを参考にしてプレパラートを作成することで、多くの素材を得ることができました。

次の写真は、その中の一枚です。酢酸オルセインで染色し、押しつぶし法でプレパラートを作成した後に、撮影したものです。

画像をクリックすると大きくなります

シロイヌナズナの根端での体細胞分裂の撮影

そして、いよいよシロイヌナズナの根端での体細胞分裂の撮影についてですが、これが難航しました。対比させるために、タマネギの根端と同様に、酢酸オルセインで染色し押しつぶし法でプレパラートを作成し撮影したいと考えたのですが、そのための情報がインターネット上で見つけることができませんでした。どのように発根させ、発根してから何日目がよいのか、染色する上でのコツなど、ひとつも見つけることができず、手探りで進めていくことになりました。

次の写真は、試行錯誤の中で、今のところ最良の写真になります。

画像をクリックすると大きくなります

発根後に側根が生えて来た頃に固定し、それらを希塩酸で処理後、酢酸オルセインに24時間漬けてから、個々の根端を切り出し、それらをまとめて押しつぶし法でプレパラートにしたものです(側根が出るのを待つことで、ひとつの種子から複数個の根端を得られる)。

上の写真の中には、青い楕円で二か所囲っているところがあります。それらはいずれも体細胞分裂が行われていると思われる細胞になります。他にもそれらしいところがいくつも写っていますが、青い楕円で囲った細胞ではその可能性がとても高いように見えます。

それにしても予想していたこととはいえ、タマネギと比べて細胞はとても小さくその中の染色体と思われるものも短いです。

また、条件をいろいろと変えて染色を試みたものの、今の所この写真以上に綺麗に染色することができていません。

細胞や染色体を大きくすることは当然ながらできませんが、染色はもっと明瞭なものにしたいところです。そうしないと、映像としても満足できないし、科学的な資料としても十分なものに思えないからです(染色に苦労するとは思いもよらなかったことで、これは本当に大きな誤算でした…)。

さいごに

シロイヌナズナの体細胞分裂の撮影は、現時点では満足できるものになっておりませんが、今回の探険を通して、なぜ「植物の染色体観察」の材料としてタマネギが選ばれているのかを実感することができたことには満足しております。

そして、この記事を読み、『タマネギと同じ方法でシロイヌナズナの体細胞分裂の観察にチャレンジしてみた』という方が現れたならとても幸せなことです。

読んでくださってありがとうございました。それではまた。

0 件のコメント:

コメントを投稿